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「妻と性交渉して」友人の依頼で知った無精子症 SNS通じて精子提供を始めた男性は訴える「国がしっかりしないと」 生殖補助医療の現在地

 


大阪府内に住む会社員のハジメさん(仮名・38歳)は、5年前、友人から無精子症だと打ち明けられ、「妻と性交渉して子どもを作ってほしい」と依頼を受けた。戸惑ったものの無精子症に悩む人が多くいることを知り、受け入れた。



■妻と性交渉を… 友人からの相談に応じて子ども生まれる




■SNSで始めた精子取引 「社会貢献」に達成感


世の中には、ほかにも困っている人がいるかもしれない。ハジメさんはそう考え、SNS上で自身の精子提供をよびかけるアカウントを開設した。 他との差別化を図るため、有名私大を卒業したことを示す証書や、感染症の有無を調べた簡易検査の結果なども積極的に載せている。 「毎月検査は受けていますが結果は全部陰性です。費用は1万2000円あたりで安くはないです」 海外ではこうしたSNS を使った精子提供に規制を設ける国もあるが、日本ではまだ規制する法律などはない。 意外だったのは、連絡を寄せてくる人の多くが、友人のような無精子症で悩むカップルではなかったこと。ほとんどが女性どうしのカップルだった。同性婚訴訟などによる認知の広がりとともに、子どもを持ちたいと考える同性カップルが増えてきたことが大きい。 "結婚はしたくないけど子どもはほしい"というシングル女性からの連絡も多い。 提供方法は、シリンジ法かタイミング法の2つあるという。シリンジ法は、依頼者と喫茶店などで待ち合わせをして、専用のカップに精液を入れて渡す。タイミング法では、依頼者の女性の排卵日に合わせてホテルに行き、性交渉をする。ハジメさんは、依頼者の希望にあわせて提供方法を決めるという。 交通費や施設提供料などの依頼者負担を除いて、謝礼を一切受け取らない無償での精子提供をしている。 「営利目的では一切やってません。やっぱり依頼者の方が妊娠して子どもができたっていう、その報告で"社会貢献"ができたなっていう。ほとんど自己満足的な感じになっちゃいますけど。これが一番この活動をやってる中の大きな支えですね」


■依頼者と"契約書までは交わさず" 7人が妊娠「将来的なことまで考えてない」


■SNSでの取引に様々なリスク 医師警鐘


一方、SNSを介した個人間のやりとりには様々なリスクをはらむ。 ハジメさんによれば、最近は興味本位で“精子提供者”を名乗るアカウントが急増した。なかには「タイミング法で」と謳いながら、性交渉を目的にしているケースも少なくないという。また、提供する見返りに高額な金銭を要求するケースもあると聞く。 子どもが欲しいと願う人の弱みに付け込んだ性被害や詐欺にもつながりかねない。 長年、精子提供による不妊治療などに携わってきた獨協医科大学埼玉医療センターリプロダクションセンターの岡田弘医師は、「感染症のリスク」を指摘する。 「いくら証明したと言っても、SNSではどこまで信用できるかわからない」 不妊治療などの生殖補助医療を実施する施設団体が定めるガイドラインでは、提供精子や卵子による感染症や遺伝性疾患を防ぐために、厳密な検査を実施するよう求めている。 たとえば、HIVの検査。提供された精液を6カ月の期間を空けて2回検査することが通常求められる。いずれも陰性の場合のみ「HIV陰性」と判定され、初めてその精液を使うことができる。 「自分で感染症検査を行う人もいるが、簡易検査では意味がない」と岡田医師は指摘する。


■遺伝的疾患や先天異常持つ子が生まれやすい「近親婚」懸念  海外で"1人から100人"生まれた例も


■治療のルールづくり法案巡って"駆け込み需要"も SNSで精子提供の男性「国がしっかりしないと」


精子提供による出産を望む人の8割が、同性カップルや独身女性とされる。国内では、同性カップルにも提供精子を使った不妊治療を施す医療機関があり、利用する人は年々増えている。 しかしことし2月、この治療についてのルールを設けるため、超党派の国会議員連盟が法案を国会に提出したが、医療機関で治療を受けられるのは法律婚の夫婦のみで、同性カップルや独身女性を対象外とした。 法案が通れば「精子提供による不妊治療を安全に受けられなくなる」と、慌ててクリニックに駆け込んだカップルも少なくない。 前述のハジメさんのもとにも、相談が増えたという。金銭的な余裕がなくクリニックにかかれない女性カップルからの依頼を多く受けてきただけに、法案の行方を気にしていた。当事者たちの強い反発の声などもあり、結局、法案は審議されることなく廃案となった。 「(最初から)合法化されていれば、我々みたいなドナーなんかいらないですよ。そこは国がしっかりしないからです。仕方なくリスクを背負って、応募してきてはるっていうのが今の実情ですね。ちゃんと国が子どもが欲しい方を全員オールOKってバックアップしていれば、こういう取引はなくなるでしょうね」 ※この記事は、関西テレビとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。

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